赤ちゃんの股関節脱臼について
新生児期の抱っこは縦抱きが基本
自然な姿勢、
正しい抱っこが
脱臼から赤ちゃんを守ります
もともと股関節脱臼は「先天性股関節脱臼」と呼ばれていましたが、9割以上は後天的なものです。そのため最近は発育性股関節脱臼や発育性股関節形成不全とも呼ばれています。
脱臼のが主な原因は、新生児のもっとも自然な「開排位」(カエルのように左右に開いた肢位)を無理に真っすぐにしたり、この肢位を妨げるような形のおむつや衣類をつけることでおきる股関節の動きの妨げです。 新生児は全身の関節が軟らく、股関節も非常にデリケートです。それは産道を通りやすくするためで、生後三カ月ころまで軟らかい状態が続き、次第に硬くなっていきます。そのため両足を下に引っ張り、股関節を伸展させる動作をするだけで脱臼を誘発する危険性があるのです。
新生児における代表的疾患の一つでもあるこの先天性股関節脱臼は欧米人に比べてアジア人に多いといわれています。特に日本は1970年以前脱臼多発国といわれ、完全脱臼の発生率は1%程度(100人の出生に1人)で生じていました。
その当時日本では布の三角おむつや巻きおむつが使われており、おんぶも足を真っすぐにさせていたため、股関節が伸展を強制され、脱臼が多発していたとされています。出生後の脱臼予防活動が徹底されるようになり、80年代には0.2%程度に減少しました。
しかし最近また発生率が増加傾向に転じているという報告がされており、ベビー用スリングの流行と関係があるのではないかと日本小児股関節研究会や小児整形外科学会から指摘があがっています。股関節がまだ安定していない新生児期に横抱きでスリングを使用するということは、巻きオムツと同様の効果をもたらすおそれが高いからです。
日本ベビースリング協会も生後3カ月ごろまでの赤ちゃんは頭を上にして、股を開かせる「基本抱き」(コアラ抱っこ)にするよう注意を呼びかけています。さらに欧米では、横抱きは骨が成長段階の赤ちゃん(特に未熟児や低体重児)には悪影響を与える抱き方として、新生児期から縦抱きだっこが基本とされています。
正しいデザインのベビーキャリアを選ぶ、窮屈なおむつや無理な格好でおむつをつけない、横抱きをおこなわない、厚着に気をつけるなどに注意して脱臼から赤ちゃんを守ってあげましょう。